コラム

Column

溶着とは?できることや加工の種類を分かりやすく解説

レーザ加工

2023.8.15 2023.10.19

溶着は、プラスチックや非鉄金属を接合する場合に使われる加工方法です。この記事を読んでいる人の中には、「溶着でどのようなことができるのか」「どのような仕組みになっているのか」「メリットやデメリットは何か」など、溶着について詳しく知りたい人もいるでしょう。

そこで、この記事では、溶着の原理や加工対象、溶着の種類とそれぞれの特徴などについて解説します。参考にしてください。

溶着とは

溶着は、熱可塑性の樹脂(プラスチック)や非鉄金属の接合に利用される加工技術で、接合部分の樹脂や非鉄金属が溶ける温度まで加熱し、加圧・冷却して接合します。融着や熱接着とも呼ばれます。

溶着と溶接の違いは、溶着が接合後に溶融部を判別できないのに対して、溶接は接合後に溶融部を目で見て確認できることです。

加熱には、ヒーターなどによって非加熱物の外部の熱源で熱伝導を利用して加熱する外部加熱と、非加熱物自体を内部から加熱する内部加熱があります。外部過熱は熱伝導を利用するので時間がかかるのに対し、内部加熱は溶着部分だけを加熱するため短時間で済むのが特徴です。

加熱の後は、圧力をかけて接合しますが、圧力が高いと溶着の時間は短くなる半面、高すぎると溶着強度が弱くなる場合や変形する場合があります。

また、冷却は溶着の強度を上げるために行われますが、時間が不十分だと強度が下がるので冷却には十分な時間をかけることが重要になります。

これらの加熱能力、加圧力、冷却能力の違いで溶着の風合いや仕上がりが大きく変わるため注意が必要です。

急な仕様変更に対応できる拡張性の高いレーザ溶着システム

溶着でできること

溶着によってプラスチックや非鉄金属を接合できます。プラスチックでは、熱可塑性のフィルムやシートの溶着に利用され、塩ビ、アクリル、ポリカーボネート、ABCなどの接合に使われます。

食料品、医薬品、電子部品などの製品の保護を目的に、このようなプラスチックを材料で密封性の高い包装や容器がつくられていますが、これらの包装や容器は、熱可塑性プラスチックのシートやフィルムを溶着加工してつくられます。

その他、洗剤などの詰め替え容器に利用されているパウチ容器や、マスクやおむつなどに使われる不織布の加工も溶着技術が用いられているのです。

溶着の種類

溶着の種類には、被加熱物に外部から熱を加える熱溶着、高周波や超音波で被加熱物の内部から加熱する高周波溶着と超音波溶着、レーザ光の熱によって加熱するレーザ溶着の主に4つがあります。

この章では、それぞれの方法の原理や特徴、メリットとデメリットなどについて説明します。

熱溶着

熱溶着は、加熱した熱板で樹脂を溶融、冷え固まるまでに加圧して接合する方法で、樹脂溶着の中では古い加工法です。

そのメリットは、溶着強度が高いこと、消耗材が不要なこと、大きな部品やブロー成型品も溶着できることなどです。反面、デメリットは予備加熱に時間が必要で熱も常に保つ必要があるなど、装置の設置・管理に注意しなければいけません。

熱溶着の方法にはコテ式溶着、熱板式溶着、熱風式溶着の3種類があります。それぞれの特徴を説明します。

コテ式溶着

コテ式溶着は、コテと呼ばれる加熱板を接合する2枚の樹脂製シートの間に挿入し、最大400℃まで熱しローラーで加圧して溶着する方法です。溶着幅は最大40mmで、溶着面に直接加熱板を当てるので被加熱物の厚さに影響されないこと、他の熱溶着方式よりも溶着風合いが美しく、ほとんどの熱可塑性フィルム・シートを溶着できるというメリットがあります。

熱板式溶着

熱板式溶着は、熱した板を接合する対象物で挟み込んで溶着面を熱し、対象物が溶ける温度で熱板を離して素材同士を接合、一定の圧力で押さえ込んで強固に溶着する方法です。

熱板溶着のメリットは、部品の大小を問わず、立体的形状にも対応できること、熱可塑性樹脂であればすべてに対応できること、構造が比較的シンプルで導入コストが安価なことです。

デメリットは、被加熱物に精密機器や電子部品が入っていると溶着できないこと、溶着した際に溶着部分が盛り上がる余肉(バリ)が出ること、ヒーター切れや交換に手間がかかること、などがあります。

用途は、自動車の樹脂タンク、防炎・テント用など樹脂シート類、携帯電話の樹脂ケース、住宅向け貯水タンク、文房具ケースなどで、広く使われています。

熱風式溶着

熱風式溶着は加熱する2枚のシートの間に最大700℃の熱風を吹きつけて加熱し、ローラーで加圧して溶着する方法です。対象物の厚さに影響されず、熱風温度、風量、ローラー加圧力、吹出しノズルの位置調整などで溶着条件が決まります。溶着幅は10~45mmです。

高周波溶着で加工しにくいオレフィン素材の加工や他の溶着方法では困難な曲線加工ができます。主な用途としては、フレキシブルコンテナバッグ、テントシート、風管、養生シート、フィルター、目止め(シーリング加工)、防護服などがあります。

高周波溶着

高周波溶着は、数10MHzの高周波(電磁波)エネルギーの電界作用で被加熱物(誘電体)を発熱させる、高周波誘電加熱法による溶着方法です。ヒーターなどによる外部過熱に対して、被加熱物の内部から発熱させるので内部加熱と呼ばれています。

被加熱物の溶着部分や形状に合わせたプラス電極、マイナス電極の高周波金型で被加熱物の樹脂を挟み、圧力を加えながら高周波電界を加えると、分子レベルでの衝突や振動、摩擦が物質の内部で発生して、発熱が生じて被加熱物が融合、溶着されます。放熱と温度差で、溶かしたい部分を選択的に加熱できるのが特徴です。

高周波溶着のメリットとしては、外部加熱方式が熱伝導加熱で長時間かかるうえ、溶着しない部分にも熱の影響が出ることがあります。

また、被加熱物の溶着する部分だけを内部加熱するので短時間で済むこと、溶着しない部分に樹脂の糸引きなどの熱による影響を与えないので見た目がきれいで仕上がりは美しい風合いになること、分子レベルで素材同士が溶着されるので強度に優れていることなども高周波溶着のメリットです。

しかし、高周波の電波を応用しているため、関連法規や周辺設備への電磁妨害に注意が必要です。

主な用途としては、シート状の塩ビやナイロンなどの熱可塑性樹脂、農業用フィルム、テントシート、自動車内装、手帳などの加工に利用されます。

超音波溶着

超音波溶着とは、周波数20kHz(1秒間に20,000回振動)以上の超音波振動を、ホーンと呼ばれる共鳴体の先端から被加熱物に伝えて、その内部に発生した強力な摩擦熱で樹脂や金属を接合する方法です。

超音波溶着の場合、超音波振動を与える時間(溶着時間)、超音波振動の大きさ(振幅)、加圧力の3つが重要な要素となります。その組み合わせ次第で溶着強度が変わります。

溶着時間が長いと被加熱物は溶けやすくなりますが、長すぎると樹脂が炭化する場合があります。振幅も高いほど溶着性が高くなる反面、高すぎる場合、樹脂に傷やクラックが発生することがあります。

加圧力も高いと溶着時間が短縮されますが、高すぎて溶けなくなることもあります。重要なのは、この3要素を適切な値で管理することです。

超音波溶着のメリットは以下のように多く、安全性も高いことから食品パックなどのプラスチック製品などで導入事例が増えています。

・ほぼすべての熱可塑性のプラスチックに適用できる

・連続溶着や多点同時溶着が可能

・溶着時間が短いので作業時間を大幅に短縮できる

・消耗する部品や素材がなく経済的

・装置は比較的小型で面積を取らず、比較的安価

・異物の混入がなく表面が汚れていても溶着可能

・消耗品を使わないので、ランニングコストが少ない

・溶着時のみの通電なので省エネで、環境に優しい

一方、超音波溶着のデメリットは、大きい部品や複雑な形状や不規則な形をしているもの、立体的な形状などの場合、溶着が難しいことです。

レーザ溶着

レーザ溶着は、レーザ光を照射し、樹脂やプラスチックの境界面で熱を発生させることで溶着する方法です。

原理としては、レーザ光を吸収する樹脂(吸収側樹脂)の上に、レーザ光を透過する樹脂(透過側樹脂)を重ねて、レーザ光を照射することで、吸収側樹脂がレーザー光を吸収し発熱し、樹脂が溶融します。

吸収側樹脂の熱が透過側樹脂に伝わり、界面が互いに溶融することで2つが溶着されます。

レーザ溶着のポイントは、透過側樹脂のレーザ透過性です。

原理的には、透過側樹脂に約30%以上のレーザ透過率が必要となります。

仮に透過率が低い場合、透過側樹脂がレーザを吸収し溶けてしまうことが発生しかねません。

ですが、ナチュラル材のほとんどは「白」「透明」で、厚み1mm~2mm程度の透過率は40%以上になるため、材質としてレーザーによる溶着は可能です。

レーザ樹脂の特徴として、ねじや接着剤を使うことなく2つの部品が接合可能であり、レーザ照射部以外に熱の影響を与えないため、微細は部品加工に適していることがあげられます。

超音波溶着は振動による製品ダメージのリスク、熱溶着には加熱した鉄板によって直接加熱する必要があるため、小型部品には対応できないといったデメリットがありました。

対してレーザ溶着は、振動による機械的ダメージがなく、レーザ照射部以外に熱ダメージを与えないため、微小な部品でも対応することが可能です。

レーザ溶着は製品へのダメージが少ないことや、製品ごとに型が不要なことから、小型化・薄型化が進む電子部品を中心に導入が進んでいます。

まとめ

溶着とは、熱可塑性樹脂や非鉄金属を加熱・加圧・冷却して接合する加工技術です。被加熱物に外部から熱を加える熱溶着、高周波や超音波で被加熱物の内部から加熱する高周波溶着と超音波溶着、レーザー光の熱によって加熱するレーザー溶着の主に4種類があり、それぞれの仕組みや特徴、用途が異なります。

溶着した対象物の溶着強度が強くて仕上がりが美しくなるかどうかは、それぞれの溶着方法の特徴などをよく理解しなければいけません。対象物の種類や形状、大きさ、用途などに応じて適切な溶着方法を選び、最適な条件で溶着できるかどうかにかかっているといえるでしょう。

関連するソリューション

レーザ加工のお悩み、
ラボでのテスト加工に関するご相談、
お気軽にお問い合わせください。