レーザ加工機の種類やレーザーの分類について解説
2023.8.15 2023.10.19
レーザ加工機はデータを使い、素材にレーザを照射することで切断や穴あけ、溶接、マーキングなどのさまざまな加工が可能です。素材もアクリルや金属などの硬いものから、紙や革などのやわらかいものまで加工できるため、幅広い業界で導入されています。刃物などの加工に比べて加工面がきれいに仕上がる点や微細な加工も可能な点など多くのメリットがあるため、導入を検討している方も多いのではないでしょうか。
レーザ加工機は種類によって適している加工や対応できる素材が異なります。導入を検討する際には、レーザの分類や加工したい素材にはどのレーザ加工機が適しているのかを知っておくとよいでしょう。
この記事では、これからレーザ加工機を導入しようかと考えている、レーザ加工機の種類について知りたい方に向けて、レーザにはどのようなものがあるのか、加工機の種類などについて解説します。ぜひレーザ加工機を導入する際の参考にしてください。
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レーザ加工の原理
レーザ加工機は、レーザを特殊なレンズで集光することで高密度なエネルギーをレンズの焦点に集中させ、素材に照射、素材を融解あるいは蒸発させることで加工を行います。レーザ加工では金属やプラスチック、木材や布などを切断したり溶接したり、マーキングをすることが可能です。
レーザの分類
レーザは媒質によって大きく「固体」「液体」「気体(ガス)」の3つに分類でき、それぞれ出力や発振形態などにより用途が異なります。
ここではそれぞれのレーザの特徴について解説します。
固体レーザ
固体レーザはレーザの媒質に鉱石などの半導体を除く固体を用いたものです。レーザのパワーが強く、小型でも大きな出力が得られるのが特徴です。細かい加工に向いており、金属・樹脂などへのマーキングによく使われます。医療業界で活躍する「ルビーレーザ」や金属のマーキングに使われることの多い「YAGレーザ」が代表的です。
液体レーザ
液体レーザは媒質が液体のレーザで、有機色素を使ったものが一般的です。有機色素とは色素分子をエチレングリコールやエチルなどの有機溶媒に溶かしたもの。主に理化学用として使われることが多く、「色素レーザ」は赤ら顔治療にも使用されています。
気体(ガス)レーザ
気体(ガス)レーザは媒質が気体のレーザーを指します。特徴は固体や液体と比べて媒質が均質なため損失が少ない点です。小型でも大きな出力が得られる固体レーザとは反対に、気体レーザで大きな出力を得るためには、共振器を大きくする必要があります。主な用途は紙や木材、アクリルなどの切断やマーキングで、「CO2レーザ」が代表的です。
半導体レーザ
半導体レーザは媒質が半導体のレーザで、Ⅲ-Ⅴ族半導体やⅣ-Ⅵ族半導体が使われることが多いです。半導体自体は固体ですが、レーザでは別のものとして分類されます。固体レーザと同じく小さな共振器でも大きな出力が得られるのが特徴です。紙・木材・革製品・アクリル(黒)の加工で使われることが多く、透過する素材は加工できません。主に「レーザポインタ」「光通信用」などに使われています。
レーザ加工機の種類
レーザ加工機はレーザを照射して素材に切断や溶接、彫刻などの加工を施す機械です。紙や革製品などの加工から金属の加工まで多様な素材に対応できるため、さまざまな業界で使われています。レー加工機はレーザの媒質により用途が異なるため、使用する目的によって最適なものを選ぶことが重要です。
ここでは代表的な5つのレーザについて解説します。
CO2レーザ
CO2レーザはCO2ガスを励起媒質として赤外線を発生させる気体レーザの加工機のことです。大きな出力での加工やレーザ加工機では珍しく透明な素材の加工もできます。主な用途は金属の切断・溶接・穴あけなどで、レーザ加工機のなかでもよく使われる種類です。加工の際に金属が溶融することで光が発生しますが、レーザ光線自体は赤外線のため人間の目で見ることはできません。レーザは目に入ると失明する可能性があるため、レーザが加工機の外へ漏れないための対策をする必要があります。
ファイバーレーザ
ファイバーレーザは光ファイバを使った固体レーザの加工機。仕組みは気体レーザーのCO2レーザーと異なり、ダイオードポンプを通して、ガラスファイバーでエネルギーを増幅する方法です。CO2レーザーで必要なレーザガスが不要な点や、エネルギー効率が高い点、発振器のメンテナンスが簡単である点でCO2レーザに比べてコストが抑えられるというメリットも。プラスチックや金属のマーキングに適していて、なかには金属の彫刻ができるものもあります。金属の彫刻をしたいとお考えの場合は、対応可能な種類か導入時に確認しましょう。
UVレーザ
UVレーザは基本的なレーザの波長の1/3で、その波長が紫外線と同じ領域のため「UVレーザ」と呼ばれています。特徴は素材に対しての吸収率が高いため、加工時に熱影響を与えない点です。金や銀などのレーザを反射しやすい素材にも加工でき、バリが発生しにくく、きれいに仕上がります。波長が短いため小さい領域に集光でき、効率のよい加工が可能です。出力を上げずに高品質の加工が可能なため、微細加工に適しています。
超短パルスレーザ
超短パルスレーザはパルス幅が数フェムト秒(※1)~数ピコ秒(※2)のパルスレーザです。超短パルスの特徴は、超高速性を備えているため、レーザの熱による素材の損傷を少なくでき、バリやクラックなどが発生しにくくなります。レーザ加工の1つのため、非接触・非熱加工で加工できるのはもちろんのこと、ミクロン単位の微細な加工が可能です。
※1 1フェムト秒は1000長文の1秒
※2 1ピコ秒は1兆分の1秒
YAGレーザ
YAGレーザは人造結晶を使った固体のレーザ加工を行う加工機です。「YAG」という名前の由来は、レーザを発生させるために使っている元素「イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet)」の頭文字から。レーザを集光するミラーの代わりに光ファイバを使うことでエネルギーを加工点まで誘導します。鉄やアルミ、ステンレスなどの金属や樹脂のマーキングに適したレーザ加工ですが、金属の切断や溶接のような高出力が必要なレーザ加工も可能です。
レーザ加工機を選ぶポイント
ここまでレーザの分類やレーザー加工機の種類、適している加工について解説してきました。レーザ加工機を導入する際には以下のポイントも併せて確認しておきましょう。
加工したい素材に合わせてレーザの種類を決める
レーザ加工機は加工する素材ごとに適しているものがあります。効率よく加工を行うためにも導入を検討する際には加工したい素材に合わせて種類を決めるのがおすすめです。例えば、透明・半透明の素材、木材、樹脂、革の加工ならCO2レーザー、金属のマーキングならファイバーレーザやYAGレーザが適しています。
加工が難しい素材に注意する
レーザの種類によっては加工の難しい素材が存在します。レーザ加工機を導入する前に、加工したい素材が加工できるものなのかについて確認することが重要です。例としては以下の素材がレーザ加工には難しいとされています。
- ポリ塩化ビニル(塩素を含む素材)
- レーザ加工によって有害な煙が発生する素材
- 鏡や鏡面加工などレーザーを反射する素材
上記の他に、透明な素材も挙げられるのですが、このような難易度の高い素材でも、レーザ発振器の種類を変更したり、真空チャンバーの中でガラス越しに加工するなど対策は可能です。
加工可否の判断でお困りであれば、弊社へお問い合わせください。
レーザ加工機の出力で選ぶ
レーザ加工機の出力も選ぶときに確認したいポイントです。加工の品質や素材によって適切なレーザ出力に調整する必要があります。
一般的に、出力が大きいレーザ加工機であれば、厚みのある素材の切断もスムーズに行うことができ、出力が小さいものに比べて短時間で加工できるでしょう。また出力が大きければ、出力の調整幅が広がりさまざまな加工に対応できます。
しかし、レーザ加工機の出力が大きいほど価格が高くなってしまうため、加工方法や加工したい素材の厚みに合わせた出力のレーザ加工機を選ぶことが重要です。
例えば、彫刻やマーキングでは、小さい出力のレーザ加工機でも優れた仕上がりにすることができます。厚みのある素材やカット加工、高速加工をしたい場合では大きい出力のレーザ加工機が適しています。
まとめ
レーザ加工機はデータがあれば簡単に多様な素材を加工できる便利な機械です。メリットも多く、加工可能な素材や加工方法の種類が幅広いため、さまざまな業界で活躍しています。
レーザは媒質によって固体レーザ・液体レーザ・気体(ガス)レーザ・半導体レーザの4つに分類され、それぞれに適した素材や加工方法があるため、特徴を把握し、用途に合ったレーザ加工機を選ぶことが大切です。例えば、ファイバーレーザは金属、プラスチックの切断、溶接、穴あけ、マーキングに適していますし、長短パルスレーザはセラミック、ガラスの微細加工(ミクロン単位)、金属、プラスチックの非熱加工に適しております。
予定している加工方法や加工したい素材に適したレーザ加工機を選ぶためにも、導入の際には今回ご紹介したポイント3つを確認して検討するとよいでしょう。
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