コラム

Column

ガルバノスキャナとは?原理や構造、用途などを詳しく解説

レーザ加工

2023.8.15 2023.10.19

ガルバノスキャナとは

ガルバノスキャナとは、反射鏡を用いてレーザ光を任意の方向に制御し、レーザ光をピンポイントで照射する制御装置です。レーザ加工やマーキングをはじめ、現代の精密加工の核とも言える装置で、高性能な3Dプリンタにも活用されています。

名前の由来は「ガルバノメーター」に因んでいます。ガルバノメーターは検流計とも呼ばれ、電流を検出して測定するための機械です。18世紀、カエルに電気火花を当てて筋肉が痙攣することを発見したイタリア出身の医師であり物理学者でもあるルイージ・ガルヴァーニの功績を称えて名付けられました。

ガルヴァーニの発見は生体電気研究の基礎となり、現在も神経系の電気パターンや信号の研究に生かされています。のちにイタリアの自然哲学者で物理学者のボルタが、ガルヴァーニに理論を発展させて、電池を発明しました。ガルバノスキャナでも、レーザ光の位置制御にガルバノメーターの原理が応用されているため、ガルバノの名称が用いられています。

ガルバノスキャナの原理

ガルバノスキャナはレーザ加工やマーキングのためのスキャンを行う方法の一つです。ガルバノスキャナを用いることで、高精度なレーザ溶接、レーザ切断、レーザ穴あけなどが可能となりますが、装置の全体像や目的によって活用方法は多岐に渡ります。ここでは、ガルバノスキャナの原理とスキャンできる仕組みについて解説します。

そもそもマーキングの手法には、以下の2種類があります。

・接触マーキング

・非接触マーキング

レーザ光を使用して行うマーキングは、非接触マーキングに分類されます。非接触マーキングには、大きく「マスク式」と「スキャン式」の2つに分けられます。マスク式は、レーザー光を面で照射して、マスクを通過した部分のみが印字される方式です。あらかじめ光を透過させる範囲を指定したマスクを作成する必要があるため、小ロット製品には不向きという特徴があります。

スキャン式はレーザ光を反射して、針で像を描くように印字することが可能です。レーザ光は発振器から照射され、ガルバノミラーを経由して対象物に印字していきます。従来はXYの2軸制御のガルバノミラーが主流で、平面にレーザ光を走査していましたが、最近はZ軸の3軸制御の機械も登場しています。Z軸が追加されたことにより、ミラーが3枚となり、立体の対象物に対しても印字が可能になりました。

ガルバノミラーには対になるガルバノモーターがあり、制御ドライバによって管理されています。つまりガルバノスキャナは、レーザ光を反射させる「ガルバノミラー」、反射位置を調整する「ガルバノモーター」、モーターを制御する「制御ドライバ」の3ユニットの集合体が軸となっています。

低熱影響・高加工精度のレーザ加工はこちら

ガルバノスキャナの用途

ガルバノスキャナの特徴はレーザ光を高精度に制御できる点です。よって、精密機械や先端技術などで広く利用されています。ここでは、特に注目されている以下の3つの用途についてご紹介します。

・レーザマーキング

・材料や部品の加工

・生化学や生物工学などの研究領域

これら以外にも、溶接、レーザスキャン、光干渉断層計(OCT)の分野でも活用できるため、きっとお客様のご要望にも沿えるでしょう。また、ガルバノスキャナは周辺機器と組み合わせることでカスタマイズすることも可能です。

レーザマーキング

手書き、スタンプ、刻印、ラベルといった接触マーキングと比較して、非接触マーキングであるレーザ光には、さまざまなメリットがあります。まず、従来の手法では困難とされていた小さな文字や記号も正確かつ鮮明にマーキングができるようになりました。

また、インクなどの消耗品の管理も必要なくなり、個人の技量に影響されることもほぼありません。ガルバノスキャナの操作さえ覚えてしまえば、誰でも高品質なマーキングができる点も大きな魅力と言えるでしょう。

材料や部品の加工

小型化、軽量化が求められる現代産業において、材料や部品はより小さなサイズが必要となります。さらに短納期の依頼や試作品の開発など、市場ニーズにマッチした加工を行ううえでも、ガルバノスキャナは有用です。

ミクロンやナノ単位で対象物に穴を明ける作業や、複雑な3次元のカッティングもガルバノスキャナを用いることで、高精度に仕上げることが可能となります。

生化学や生物工学などの研究領域

ガルバノスキャナは産業用途以外にも活躍の場が見込めます。例えば、生命活動を科学的に研究する生化学や、生物学の知見をもとに実社会への利用法を研究する生物工学(バイオテクノロジー)の領域では、レーザ顕微鏡が必須です。

ガルバノスキャナは、従来と比較して高精度な処理を実現し、細胞の活動をより精密に観察することができるようになりました。

ガルバノスキャナの構造

ガルバノスキャナを構成しているそれぞれのパーツと役割について、ミラー、スキャナ、制御ドライバの3点から解説します。

ミラー

ガルバノスキャナのミラーはレーザー光を反射する部品で、サイズとコーティングはレーザ仕様によって決定します。

ミラーは大きくなるほど重くなるため、それに応じた加速トルクと電流が必要です。加速トルクとは、モーターを加速、減速させるときに必要な力のモーメントのことを指します。

また、ミラーと対になるモーターも、ミラーが小さければ小さいサイズ、ミラーが大きければ大きいサイズとなります。

スキャナ

スキャナはミラーを動かす駆動源です。ミラーの角度を制御する装置で、現在の位置がわかるセンサーもついています。また、スキャナはモーターと位置センサーで構成されており、振れ角とミラーサイズがポイントです。

振れ角は駆動タイプが主流ですが、最大値以上に設定をしてしまうと品質に影響が出るため、仕様値を超える角度設定は避けましょう。

ガルバノスキャナのモーターは、限定した角度を揺動させる構造で、高精度な制御が可能です。回転角度を限定することで、モーターの摩擦要因が少なくなり、耐久性を向上させることができます。また、高い急加速性を実現するために、瞬時に高いトルクが出せるよう設計されています。これにより、ガルバノスキャナの肝である目標角度への高速移動が可能です。

制御ドライバ

制御ドライバはミラーとスキャナからの情報を処理し、ミラー角度を制御するためにガルバノスキャナに電力を供給します。ドライバ内部では、位置指令信号を出力するコントローラが内蔵されています。

コントローラはミラーの位置をドライバに指令するための装置、ドライバはミラー位置指令信号を元に、ガルバノスキャナを制御するための装置です。ミラーとスキャナを管理する司令塔のような役目を果たしていると言えるでしょう。

関連するソリューション

レーザ加工のお悩み、
ラボでのテスト加工に関するご相談、
お気軽にお問い合わせください。