IRレンズとは?仕組みや近赤外対応などの種類・活用事例をわかりやすく解説
2024.2.28 2024.2.28
IRレンズとは、人の目では見えない赤外線を透過するレンズです。温度差を映像化する赤外線カメラなどで用いられ、セキュリティや医療、化学といった幅広い分野で活用されています。この記事では、IRレンズについて詳しく解説し、IRのことを知りたいと考えている方に役立つ情報をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
IRレンズとは
IRレンズとは、全ての物体から放射され、目では見ることのできない赤外線を透過するレンズです。温度との相関性が高いことから、物体が発している熱を検知し、温度差を映像化する赤外線カメラで用いられることが多く、研究や非破壊検査・測定、警備・防衛用など幅広い分野で活用されています。
IRレンズの仕組み
IRレンズの構造は、基本的に可視光レンズと変わりません。赤外線の波長や屈折率に合わせた設計を採用することで、目には見えない赤外線の透過が可能になります。また、ゲルマニウムやジンクサルファイトなど、赤外線を透過しやすい素材を使用しているのもIRレンズの特徴です。
IRレンズの種類
IRレンズは、透過できる波長帯によって複数の種類に分類することが可能です。ここでは、IRレンズの種類を透過できる波長帯別にご紹介します。
種類 | 透過できる波長帯 |
---|---|
近赤外線レンズ | 1um~1.7um(2.3um) |
中赤外線レンズ | 3um~5um |
遠赤外線レンズ | 8um~14um |
また、IRレンズはレンズの材料によっても違いがあります。IRレンズに使われる主な材料は、以下の通りです。
材料 | 透過率 |
---|---|
ゲルマニウム | 高い |
ダイヤモンド | 高い |
カルコゲナイド | 普通 |
ジンクサルファイト | 普通 |
ジンクセレン | 普通 |
シリコン | 低い |
近赤外線レンズ
近赤外線レンズは、短い波長帯を透過できるのが特徴です。近赤外線は可視光線に近い性質を持っているため、暗視カメラや赤外線通信などで利用されています。
中赤外線レンズ
中赤外レンズは、近赤外線と遠赤外線の間にある波長を透過することが可能です。化学物質の同定のほか、暗闇や多様な気象条件下でも対象物を検知できる技術・サーマルイメージングなどで利用されています。
遠赤外レンズ
遠赤外レンズは、ガラスの透過限界波長より長い波長の赤外線を透過するレンズです。熱を可視化できる特性を活かし、温度や人流の情報を可視化する赤外線センサーや赤外線カメラで利用されています。
IRレンズの活用事例
IRレンズは、主に以下の分野で活用されています。ここでは、具体的な活用事例について解説します。
【IRレンズが使われる主な分野】
- 製造・工業
- セキュリティ
- 医療・化学
- インフラ
- 通信
製造・工業
IRレンズを使用したサーモグラフィは、工場の温度管理や異常検知にも取り入れられています。固体の熱伝導だけでなく、液体や空間、透明フィルムなどの温度も可視化できるため、さまざまな方法で活用することが可能です。
ほかには、赤外線検査装置によって人の目では確認できない製品の細かな傷の確認もできます。鏡面加工品やセラミック成形品、金属加工品などについた微細な傷をチェックできるため不良品の発生を防げるでしょう。
また、最新車両に搭載するパネル素材の製造では、細かな温度管理が欠かせません。サーモグラフィを活用することで、温度測定結果のフィードバックを確かめながら製造進行が可能になります。
セキュリティ
セキュリティ分野では、監視カメラでIRレンズが用いられています。暗闇でも人や物の温度を検知できる性質を活かし、夜間に侵入者があった場合も姿を確認できるのが特徴です。夜間になると照明が消えて真っ暗になりやすい学校や工事現場、オフィス、事務所などで導入されています。
医療・化学
医療分野において、IRレンズはサーモグラフィで活用されています。サーモグラフィとは、物体から発せられる赤外線から温度情報を分析し、分布図として画像化する装置のことです。これにより、神経や血流の障害、痛みの有無が検査できます。
また、化学分野では顕微鏡への応用が期待されています。IRレンズを取り付けることで、シリコンウェハ(微粒子や微細な凹凸を限界まで排除した半導体の基盤材料)も細かなところまでしっかりと確認することが可能です。
インフラ
変電所などのインフラ設備の点検でも、IRレンズを搭載したサーモグラフィが利用されています。IRレンズを通じて温度を監視し、オーバーヒートによる故障防止やメンテナンス費用の削減などにつなげています。
また、サーモグラフィとドローンを組み合わせれば、山奥にある送電線など点検が困難なインフラ設備に対応しやすくなるのも大きなメリットです。点検の手間が減るだけでなく、コストの節約にもつなげられます。
通信
通信分野では、遠赤外線通信で用いられています。赤外線通信とは、赤外線を経由してデータ通信を行う技術のことです。エアコンやテレビのリモコン、携帯電話、パソコンなど幅広い機器で使用されています。伝送距離が短いため、送信部と受信部が向かい合っていないと通信できませんが、無線LANよりも高速の通信が可能です。
まとめ
IRレンズは、目に見えない赤外線を透過するのが特徴です。その特性を活かし、監視カメラや医療用サーモグラフィ、顕微鏡など、さまざまな分野で活用されています。
「IRレンズの導入を検討している」「IRレンズについて詳しく知りたい」とお考えでしたら、ぜひ伯東へお気軽にご相談ください。
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