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超短パルスレーザとは?特徴や発振原理・用途・応用事例をわかりやすく解説

微細加工

2024.4.2 2024.4.2

超短パルスレーザとは、短いパルス幅で発振するレーザのことです。材料への熱影響を抑え、ガラスやセラミックなど幅広い材料の微細加工や穴あけなどに対応することが可能です。こちらでは、超短パルスレーザの特徴や発振原理、用途などについて詳しくまとめています。超短パルスレーザへの理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

超短パルスレーザとは

超短パルスレーザとは、パルス幅が数フェムト秒〜数ピコ秒のパルスレーザのことです。フェムト秒は1000兆分の1秒、ピコ秒は1兆分の1秒を表します。一般的に、フェムト秒レーザ(フェムトセカンドレーザ)やピコ秒レーザと呼ばれることもあります。

パルスレーザとCWレーザの違い

レーザには「パルスレーザ」と、「CWレーザ」(連続発振レーザとも呼ばれる)の2種類があります。パルスレーザは、一定の周波数の繰り返しで光が出るレーザであり、バルス幅の最適化が可能です。高出力のピーク強度により処理スピードが上がるため、細かな加工やマーキングで役立てられます。溶接や精密切断、機械加工でよく用いられますが、近年は医療分野などで活用されるケースも増えてきました。

CWレーザは、一定の出力のレーザ光が連続的に照射されるのが特徴です。安定性の高さに加え、簡単に制御できることから幅広い産業分野で活用されています。
例えば、製造分野では非金属・金属材料の溶接・切断、精密加工などで取り入れられています。

超短パルスレーザの特徴

超短パルスレーザの主な特徴は、以下の通りです。これらの特徴により、超短パルスレーザでは熱ダメージを抑えながら加工が可能です。熱影響が少ないため、質の高い加工ができる点が注目されています。

超短パルス性

超短パルス性とは、非常に短い時間でパルスが生じる性質です。この特性により、レーザの熱による素材の損傷を低減させることができます。

超高速性

超短パルスレーザの速度はフェムト秒という電気信号をも上回る超高速性を備えています。そのため、分子振動や化学反応の過程を測定することも可能です。

超高速性

超高強度性は、小さな平均出力でも極めて大きなピーク強度を実現できるのが特徴です。超短パルスレーザのピーク出力は、ペタワット級(1ペタワットは1000兆ワット)を誇ります。レーザのみが実現可能なこの超高強度性を活用することで、ガラスの内部加工などが可能です。

超広帯域性

超短パルスレーザのスペクトル分布幅はとても広いため、広帯域のコヒーレント光の生成が可能です。コヒーレントとは、可干渉性のこと。コヒーレント光は光が拡散しにくく、遠くまで届きやすい特性を備えています。

超短パルスレーザの発振原理

超短パルスレーザの主な発振原理には、大きく分けて以下の種類があります。ここでは、各原理について解説します。

直接変調法

直接変調法は種光源(レーザ光源)の電流制御を直接オン・オフし、パルス光を生じさせる手法です。パルスの波形を制御でき、任意のパルス幅(ps~ms)に変えられます。

CWレーザと比べて熱の影響を抑えられるため、光通信や穴を空ける加工に用いられることが多いです。ただし、高出力の発振器のほとんどは、直接変調法ではなく外部変調法が採用されています。

外部変調法

外部変調法は、外部変調器を使うことでCWレーザの出力を間接的にオン・オフし、パルス光を生じさせる手法です。より高い出力のレーザを求めている場合に用いられ、多くの高周波数または高出力の発振器には外部変調法が取り入れられています。なお、発生できるパルス幅は直接変調法とほぼ同じです。

モード同期法

モード同期法は、できるだけ多くの波長の位相(周期的な運動をするものが周期内のどの位置にいるかを示すもの)を合わせることで、さまざまな波長を含んだパルス幅のレーザを生じさせる手法です。ほかの手法と比べて、短いパルス幅を実現できます。非線形光学分野や非加熱加工、スーパーコンティニューム光源の種光、テラヘルツ光などで活用されています。

超短パルスレーザの用途

超短パルスレーザは、さまざまな分野で活用されています。主な活用分野としては、以下のような分野が挙げられます。

【超短パルスレーザが使われる主な分野】

  • 製造業
  • 医療
  • 理化学

製造業においては、ピンポイント加工で導入されています。レーザを照射した部分のみを加工できるため、周辺部分に損傷を与えることはなく、精密機器の基盤や半導体製造などでも活用可能です。電子機器の小型化が進む現代では、このピンポイント加工の重要性が高まっていくと考えられます。

医療分野では、衝撃波が生体組織を無損傷で蒸散させる働きを利用し、シミの除去や精密レーザ手術、眼科手術に利用されています。

理化学分野では、パルス幅の短さを活用し、超短時間での測定・分光に使用されています。また、気体に当てて異なる波長の光が生じるHGG(高次高調波)などを作ることも可能です。

超短パルスレーザの応用事例

超短パルスレーザの具体的な活用事例は、主に以下の通りです。

【主な応用例】

  • 材料の切断・穴あけ
  • 材料の微細加工
  • 材料の表面改質

ここでは、各事例について詳しく見ていきましょう。

材料の切断・穴あけ

超短パルスレーザでは、熱の影響を与えることなく材料の切断や穴あけ加工ができます。例えば、セラミックスに対するΦ10~20μmの穴あけ加工のほか、厚み0.7mmのセラミックスや厚み0.8mmのガラスの切断などが可能です。

材料の微細加工

熱影響の少ない超短パルスレーザは、ガラスやセラミック、フィルム、シリコンをはじめとした脆性材料に対しても質の高い微細加工が可能です。トリミングやマイクロテクスチャーなど、用途に合わせた微細形状に仕上げられます。

材料の表面改質

材料の表面改質では、撥水や摩擦・摩擦低減、薄膜の密着性向上などで用いられます。撥水は医療機器、摩擦・摩耗低減は自動車部品、薄膜の密着性向上は成膜下地といったように、幅広い分野で活用されています。

まとめ

熱による材料への影響を抑えられる超短パルスレーザは、さまざまな加工や表面改質に役立てられています。炭化シリコンなど今まで加工が難しいとされていた材料も、超短パルスレーザであれば加工が可能です。レーザの活用をご検討の際は、レーザ加工のプロである伯東にご相談ください。

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